深絞りは、周囲の板材を金型内へ引き込み、中空の部品を成形する加工です。金型案を検討する購買・技術担当者にとって重要なのは、環状の突起の有無だけでなく、それが板材にどう接触し、材料の動きにどう影響するかです。

1. まず突起を見分ける:似て見える三つの構造

上から見た形だけでは、環状の突起の役割は分かりません。金型の断面を確認し、型閉じから絞り加工までの板材の動きを追います。ドロービードには通常、向かい合う溝があり、その間を板材が通ります。連続した形、分割した形、追加の拘束が必要な箇所だけに設ける形があります。[1]

板材との接触のしかたで構造を区別する
構造確認する特徴主な役割
ドロービード細い突起と対応する溝が、流入経路上の板材を曲げる局所的な絞り抵抗を加え、材料の流れを調整する
しわ押さえ/ブランクホルダー広い面でフランジを対向する金型に押し付けるフランジの座屈を抑えるために支え、接触による拘束を与える
ブランクの位置決め部・段差成形前にブランクの端を位置決めする初期位置を定める。必ずしもドロービードではない

2. なぜフランジを拘束する必要があるのか

カップを絞るとき、フランジは周長の小さい内側へ移動します。周方向の圧縮によって、支えのない板材は座屈してしわになることがあります。しわ押さえは板材を支えながら、壁部の成形に必要な材料が内側へ流入できるようにします。[2]

壁部は、フランジを引き込むための力も伝えます。抵抗を増やすと制御されない流入を抑えられる一方、壁部が負担する荷重も大きくなります。材料が十分に供給されなければ、局所的な伸びと板厚減少が割れにつながります。目指すのは適切なバランスであり、しわ押さえ力を最大にすることではありません。[2][3]

3. 動画:ビードを越える板材の動きを追う

独自制作の原理解説アニメーションです。実写や成形シミュレーションではありません。01:平らなブランク、02:しわ押さえが閉じてビード上で板材が曲がる、03:パンチが下降して両端が内側へ流れ、カップ形になります。オレンジ色は板材、灰色は金型、白い点は同じ材料位置を示します。形状、隙間、速度、流れは説明用に簡略化し、実寸比ではありません。GIF形式で動画をダウンロード

動画は平らなブランクと開いた金型から始まります。しわ押さえが下がってフランジをビードに押し付け、その後パンチがダイ開口部へ下降します。オレンジ色の板材が平面からカップ形に変わり、両側の外縁が内側へ移動する様子を見てください。

01 — ブランクは平らな状態です。02 — しわ押さえが閉じ、フランジがビード上で曲がります。03 — パンチが下降し、材料はビードを越えて内側に流れ、カップの壁が伸びて底が下がります。白い点は同じ材料位置を追い、変形と材料の流入を示します。曲げ・曲げ戻しと金型との摩擦が流入抵抗を増やします。[1]

これは一般的なカップ形状の簡略断面図で、しわ押さえ、パンチ、ダイ、左右のビード断面を示します。実際の金型ではビードが連続または部分的で、反対側の型に突起を設けることもあります。この動きは、計算したプレス行程、ひずみ分布、量産金型の寸法を表すものではありません。

4. 拘束は強ければよいわけではない

しわや割れは調査の手掛かりであり、それだけで原因は特定できません。発生位置を、フランジの流入量、板厚測定、潤滑、金型との接触状態と照合します。[2][3]

現象から次に確認する項目を選ぶ
観察された現象拘束との関係として考えられること比較・確認する項目
フランジや壁部のしわ支持や拘束の不足、または不均一さにより座屈する場合があるしわの発生位置、しわ押さえの接触と隙間、局所的な流入量
局所的な板厚減少や割れ過大な抵抗が材料の供給を妨げ、引張荷重を増やす場合がある最小板厚の位置、ビードのかみ合い、各部の曲率半径、潤滑と材料の状態
流入量の偏りや部品の傾き周囲で拘束や摩擦が異なる場合があるブランク位置、潤滑剤の塗布範囲、金型の摩耗、対応する位置で測った流入量

5. 深い部品には必ず高いビードが必要なのか

いいえ。深さだけではドロービードの要否は決まりません。ブランク形状、材料特性、板厚、コーナー半径、潤滑、各部に必要な材料流入量の違いが影響します。適切なしわ押さえがあればビードなしで絞れる部品もあれば、一部の領域だけで追加の拘束が必要な部品もあります。[2][4]

ビードの高さ、半径、断面、かみ合いは、しわ押さえの条件と併せて検討します。高いビードや曲率半径の小さいビードは変形と抵抗を増やせますが、板厚減少、表面損傷、割れのリスクも高める場合があります。より深く絞れることを保証する万能なビード高さはありません。[1][3]

ビードがあるからといって、背の高いシェルを一度の絞りで製作できるとは限りません。ブランク展開、絞り比、再絞り工程の要否は、別途工程として評価する必要があります。加工方法と金型構成の違いは、関連する工程比較記事をご覧ください。

6. 試作部品を確認するための実務手順

変更の効果を何で判断するか、あらかじめ合意します。材料ロット、ブランク、潤滑、プレス設定を追跡できるようにし、複数の条件を同時に変えるのではなく、条件を管理した試験で比較します。

  1. 加工前のブランク外周に対応する位置を記し、成形後に各位置のフランジ流入量を記録します。部品全体の深さだけでなく、必要なすべての方向を比較します。
  2. 壁部、パンチ肩の曲面部、その他の疑わしい箇所を適切な方法で板厚測定します。最小板厚とその位置を、しわ、割れ、表面の跡と併せて記録します。
  3. しわ押さえの接触、ビードのかみ合い、金型の各部半径、潤滑剤の塗布範囲を金型メーカーと確認します。変更点を一つ具体的に決め、基準条件の結果と比較します。
  4. 外観に加え、完成品の機能寸法と組立要件を確認します。複数の試作部品を繰り返し評価し、改善が安定して再現することを確かめます。

例えば、初期板厚 t₀ = 1.00 mm、測定した局所板厚 t = 0.82 mm のとき、局所的な板厚減少率 = (t₀ − t) / t₀ × 100% = 18% です。これは計算例であり、合否判定の上限ではありません。許容値は部品要件、材料、成形の評価に基づいて定めます。板厚を一か所測っただけでは、部品全体が健全であるとは判断できません。